先日、新たにインフルエンザの感染者がシドニーで確認されました。3月に入るまでに2,000人を超える感染者数となり、去年と比べて倍以上となっています。家に帰ってからのうがいや手洗いは欠かさずにしましょう。予防接種は4月中旬から可能になるので、なるべく早く受けるようにしましょう。また、高熱や発疹の症状が疑われる場合は早めにかかりつけ医へ相談することをお勧めします。
インフルエンザとは
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスにより引き起こされる急性のウイルス性疾患です。毎年、秋から徐々に患者が増え始め、8月頃に流行がピークに達し、10月過ぎに収束する傾向があります。インフルエンザは自然治癒することもあるため、必ずしも抗インフルエンザ薬が必要な病気ではありません。しかし、肺炎や脳症を発症するリスクもあるため、風邪とは区別して考えるべき病気といえます。治療を必要とするかどうかは、重症度や合併症の有無などによって異なります。そのため、医療者には注意深く観察する姿勢が求められます。
原因
インフルエンザウイルスにはの三つの型(A・B・C)があります。このうち、冬に流行する「季節性インフルエンザ」を引き起こす型は、A型とB型です。インフルエンザウイルスにはさまざまな種類があるため、一度かかっても翌年以降、咳や鼻水を介して飛沫感染し 違うインフルエンザウイルスにかかることがあります。
季節性インフルエンザ以外には「新型インフルエンザ」があります。新型インフルエンザとは、動物にのみ流行していたものが、突然変異的にヒトにも病原性を示すようになったものを指します。これは季節性のものとは異なり、ほとんどの方が有効な免疫を持っていないため、世界的な大流行を引き起こし死亡率も高くなります。
症状
1〜2日程度の短い潜伏期間の後に、急激な発熱や悪寒戦慄(おかんせんりつ)などが現れます。これと同時に、筋肉痛や咳、鼻水などの症状が現れることもあります。38度以上の高熱が3〜5日持続した後、解熱していくという経過を辿ることが一般的です。熱が高くならない場合や長引く場合もあり、経過には個人差があります。 新型インフルエンザでは、下痢や嘔吐などの消化器症状がみられることがあります。
また、一度解熱してから再度発熱する二峰性発熱(にほうせいはつねつ)とよばれる熱型をとることもあります。二峰性発熱の場合は、インフルエンザの自然経過なのか、肺炎などの合併症による発熱なのか、病院で正しく判断を受けることが重要です。以下の症状が現れた場合は注意が必要です。
- 発熱の期間が典型的なインフルエンザの例よりも長くなる
- 咳がひどくなり呼吸が苦しくなる
- 意識状態がおかしく、けいれんを起こす
検査・診断
インフルエンザの診断には、迅速キットが使用されることがあります。鼻から長細い棒を入れて鼻咽頭から検体を採取したあと、検体と迅速キットを用いてインフルエンザウイルスの有無をチェックします。結果は10〜15分ほどで判明します。
呼吸に問題が出ている場合、肺炎の有無を確認するために胸部単純レントゲン写真検査を行うこともあります。脳症の有無を確認するためには、脳波検査やMRIなどの検査を行います。
治療
インフルエンザの治療薬には、内服薬、吸入薬、点滴薬があります。早期に治療を行うことで高い効果が期待できるため、発症後48時間以内に開始することがよいとされています。しかし、実際には症状や経過をみながら治療方針を決定します。インフルエンザ治療薬のなかには、小児に対して原則使用してはならないとされている内服薬もあるので、使用する場合は異常行動などの副作用が発生しないよう注意深く観察する必要があります。