尿漏れ・切迫感

女性の下部尿路症状は、排尿するときだけでなく尿を溜めているときも全てひっくるめての膀胱や尿道の不具合や異変を指し、さらに次のように分類されます。

  • 尿を溜めている間に起こるもの
  • 尿の排出に関わるもの
  • 排尿によって引き起こされるもの(違和感や痛みなど)

一般に、うまく排尿できないという症状も非常に問題となりますが、ここでは尿を溜めている間に起きる尿漏れや尿意切迫感(トイレへ行きたい感じの増強)について説明しようと思います。

尿漏れの主な症状は

  • 人前で思い切り笑うともれてしまうので困っている
  • 尿意を感じると我慢ができない
  • 産後も尿漏れが続いていてこれから先が不安
  • せきやくしゃみをすると漏れるので怖い、などです。

尿漏れの種類と症状

単純性の尿漏れには、主に次のような種類があります。

腹圧性尿失禁

尿道を締める仕組の問題で、お腹の中で強い圧力が発生するときに尿が漏れてしまう。特に、笑ったり咳き込んだり、くしゃみや運動中によくみられます。40〜50代の女性に多くみられ、40〜50代女性のうち約1/3の方が腹圧性尿失禁の傾向を自覚しているといわれています。

切迫性尿失禁

尿意を感じるときにトイレが間に合わずもれてしてしまうことです。尿意を引き起こす原因として特定のにおいや水の流れる音、トイレの看板を見るなどがあげられます。切迫性尿失禁は加齢とともに増加し、80歳代女性のうち約1/3の方が1日1回以上の切迫性尿失禁を自覚しています。なお、背景に排尿しづらさを抱えている複雑性の尿漏れは、単純性の尿漏れとは成り立ちや治療方法が異なります。

混合型尿失禁

「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の2つの要素が混合。多くの場合、2つのタイプが同時に見られることが多いです。

原因

下部尿路症状の原因は、膀胱・尿道や関連神経の機能異常、および、骨盤や骨盤底の環境の問題があり、たいてい複数の原因が重なっています。

骨盤底筋とは、骨盤の下方で、膣や尿道・肛門を締める緩める働きと、内臓器が下垂しないように支える働きを持っています。妊娠中から産後の尿漏れは、腹筋とこの骨盤底筋群の機能が低下することによって尿をコントロールできなくなることが原因で起こります。

特に妊娠中や産後は、

  • リラキシンというホルモンの影響で骨盤がゆるくなる
  • 重くなった子宮を下から支える

といった影響から骨盤底がたわみやすくなるため、尿漏れや排尿しづらさなど排尿面の異変がさまざまにあらわれます。また、骨盤底は年を取るとたわみやすくなるため、閉経後長い時間がたってから増大した子宮が下部尿路症状を引き起こす場合もあります。

治療

治療の主なターゲットは骨盤底筋や膀胱です。また、生活習慣を見直すことで生活の中での症状の軽減をはかります。

運動療法

骨盤底筋の運動は骨盤の機能不全の治療によく使われます。これはお尻の筋肉を使うことなく、肛門から尿道周辺の筋肉を意識的に引き締めるものです。運動療法ではマット運動の他に、膣内に重りを挿入しても行います。

TENS

神経筋刺激は筋肉を活性化させる別の方法として用いられます。軽い電流を持つ内部プローブを骨盤底に貼り神経を刺激し、骨盤底筋の正しい働きを教えることを目的としています。また骨盤底筋の運動のため以外に 、膀胱の緊張をほぐすために骨盤から離れた足やかかとなどの場所に使用されることもあります。

その他

腹圧性尿失禁の治療戦略には、骨盤底トレーニングと中部尿道スリング(尿失禁手術)と呼ばれる手術があります。また、高齢者の尿失禁や頻尿については、老年病学的なアプローチも重要となります。尿意のコントロールは認知能力や動機づけなど、多くの要因が関与しています。高齢者の尿失禁や頻尿については、あらゆる角度から問題点を探索した上で生活面に手を触れることのできる身内やスタッフによってアプローチする必要があります。

予防

膀胱や骨盤底筋を健康に保つためにいくつかのチェック項目があります。

頻繁にトイレに行かない

トイレに行く回数が増え、無理に排尿しようとすることで骨盤底筋に余計な負荷がかかります。トイレに行きたくなるまで待つようにしましょう。

すぐに動き出さない

急に尿意を感じた時、すぐに動き出さず波が収まるのを待ちましょう。ほとんどの切迫性の尿漏れは尿意を感じているときに歩くことで悪化します。この時につま先に力を入れたり、椅子の手すりを使ってお尻付近に圧力を加えることで尿意が軽減します。

こまめに水分の補給

水分を取ると尿漏れがひどくまってしまうように感じる方もいるかもしれませんが、実は水分の摂取を控えることで尿の濃度が上がって膀胱を刺激してしまいます。ただし、寝る直前の水分の摂取は夜中の尿意へとつながります。

食事制限

カフェインやアルコールは膀胱を刺激するため、尿意へとつながります。

スムーズに尿を全部排出できないと、逆に膀胱が不安定になって尿もれする、膀胱炎を起こして腎臓を傷めてしまう、いきんで出すために子宮脱や膀胱瘤になるなどのトラブルが起きてしまいます。すっきり出せない、途切れ途切れにしか出ないなど、尿の排出に異変を感じる場合も早めに病院を受診されることをお勧めします。