出産後の多くの女性が手首の痛みに苦しんでいます。痛みのせいで長時間赤ちゃんを抱っこしていられないなど、慢性的な痛みを持ちながら子育てをしなければいけないのかと不安に思っている方も多くいるかと思います。産後すぐから抱っこが始まると、症状が早く出る方で産後1~2週間、遅い方でも産後1~2か月目には手首の痛みが出始めます。
特に、次のような状況の方に多いです。
• 第一子の子育て中である
• 泣き止まないので常に抱っこしている
• 抱っこや授乳に慣れていない
• 生後3か月未満で首が座っていない
腱鞘炎とは
『腱』とは筋肉と骨をつなぐ組織のことで、この腱が動くときに摩擦で痛まないようにしてくれているのが『腱鞘』というものです。そこに何らかの原因で炎症が起きると『腱鞘炎』と診断されます。腱鞘は体中にあるのですが、腱鞘炎を発症しやすい部位は手首や指であり、それぞれドケルバン病やバネ指などと呼ばれます。
手首の腱鞘炎は、職業柄パソコンを使うことやものを書くことの多い方がなりやすいといわれています。また、特に産後は育児による手の酷使度が上がってしまうために、多くの女性が手首の腱鞘炎に悩まされています。
原因
腱鞘炎は日常生活動作に密接に関連した病気で、腱鞘の質の変化や手指の使いすぎによって発症します。
手指の使いすぎ
親指を無理な形で使いすぎると、手首の親指側の腱と腱鞘に炎症が起こることがあり、この状態を「ドケルバン病」といいます。また、キーボードを打つ、ものを書く、楽器を演奏する、など等の動作に関連して「バネ指」を発症することがあります。
腱鞘の質の変化
腱鞘の質の変化とは、腱鞘がむくみなどのために厚みが増したり、硬くなったりすることを指します。また、加齢や糖尿病によって腱鞘の変化を生じることもあります。
症状
初期症状では抱き上げる瞬間に痛み走ったり、何か手首をひねったりしたときに違和感が出る程度ですが、悪化すると赤ちゃんが泣いていても抱き上げられなくなることもあります。
たとえば、手首が障害を受けるドケルバン病では、手を広げたり親指を動かしたりすると、腱鞘付近にズキズキとした痛みが起こります。特に物を持つ、ペットボトルを開ける、などの親指を使ったつまみ動作によって痛みを感じます。
診断方法
腱鞘炎を疑う場合、基本的には触診などの診察を行います。まずは患者さんから様子を聞き、腫れの有無を確認し、圧をかけて痛みの変化をみます。また触診の他に、炎症が疑われる部分を触知しながら、患者さんに指を動かしてもらい、腱の動きに抵抗が生じるかどうかを感知します。
治療法
まずはマッサージやストレッチにより痛みや腫れに対応し、局所の安静をはかり回復を待ちます。
痛みや腫れへの対応
痛みの緩和のために炎症を起こしている周辺への筋肉のマッサージや、炎症を起こしている腱のストレッチを行います。また、軟膏や湿布などの外用剤による治療を行い、症状が重いような場合はステロイド注射を併用します。
局所の安静
腱鞘炎を発症した場合には、原因となっている動作を制限することが治療の第一歩です。無意識のうちに動作をしてしまうこともあるため、テーピングやギブスを利用することも効果的です。しかし、過度な固定は関節が固くってしまうため、安静の仕方には工夫が必要です。
体の調整
腕に痛みがあるまま生活していると、余計な負荷が肩や首にかかってしまいます。ですので、背中や肩甲骨回りの状態を整えることも必要です。
体の使い方
抱っこの方法や力加減についてもアドバイスを行うことで、手首に負担をかけすぎない方法を体得していきます。
予防法
腱鞘炎の発症を予防するには、同じような動作を繰り返すにしても適宜、休息をとることが重要です。また、腱鞘炎を発症した場合、局所の安静をはかることが大切です。症状により、治療に手術が選択されることもあります。腱鞘炎を悪化させないため、早期回復を目指すためにも、疑わしい症状がある時には早期受診、早期治療介入が重要です。